イミテーション・マンデイ

イミテーション・マンデイ
荒木田慧の詩集 生活の詩より
午後、全然知らない街で
執拗にぐずる男の子を
辛抱強くなだめすかし
大学まで手を引いて

彼を校舎に押し込んだあと
授業の済む16時半までの数時間
駅前まで歩くその道

通行人たちは皆どうも演技じみていて
私は首を傾げる

与えられたロールを
盲目的にこなす彼ら
安心と満足が手を繋いで
足取りも軽く12月へ向かう

曇天

彼らのきれいに切りそろえられた襟足と
清潔な外套を見送り
(駅前百貨店のショーウィンドウに
帰るのだとしても不思議ではない)
その不自然に伸びやかな硬さに
憧れと不信感を覚える

私の伸びかけの前髪や
くたびれた皮膚や
姉の犬の毛の付いたストールの
獣みたいな匂いを恥じて

ごつごつと肥大した
この関節の醜さに
どうか彼らが気づきませんようにと
ハンバーガーショップのテーブルに
手を組み肘をついて祈る

口に入りきらないほどの何かの塊を
咀嚼して嚥下して勝利し
指先まで散々舐めてやっと
欲しいのはこれじゃなかったと気づいた

16時

角の喫茶店で
いちばん大きいコーヒーを免罪符に
うたた寝

胸の小さな痣の必然性のなさを
わりと好ましく思ったりしながら
視認性のわるい
あと少しの今日を歩いて

ポケットからいつのまにか
なくなったリップクリーム
探しているうちにきっと
この冬も終わるだろうと
思った









2018年11月27日

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