叔父さん

叔父さん
荒木田慧の詩集 家族の詩より

スパゲティ食べたくて
夕飯スパゲティでいいかって聞いたら
いいよそんなの
自分の食べるもののことだけ
考えてればいいよって

スパゲティ食べたくて
麺とか買ってくるよって言ったら
金ないんだからそんなのいいよ
うどんがあるんだからそれ食べなよって
だから
スパゲティ食べたかったのに
夕飯うどんになって
でもそれは
すごく美味しかった

夜起きたら
台所
電子レンジのうえ

スパゲティの麺と
レトルトのソース
「和風きのこ醤油」
「ガーリックトマト」

叔父さんはそういうひと

ふたりでたまにでかけたら
自販機でジュース買うときとか
ちょっとこれ持ってて
ってわたしが頼む
その一瞬前に
持つよって言って
わたしの持ちきれない荷物
持ってくれる

わたしのお腹がすく前に
いつもなにか食べさせてくれる

わたしの喉がかわく前に
いつもなにか飲ませてくれる

特急にのるとき
わたしがなにもいわなくても
窓際の席 交換してくれて
わたしに世界を
みせてくれる

いつもはほとんど
連絡しないくせに
わたしがほんとに困ってる時は
ただひとことのメールにも
かならずすぐに電話をくれて
なんにも聞かずにひとことめには
わたしがだれかに言ってほしくて
しかたなかったこと
言ってくれるひと
「大丈夫だから」
「待ってるから」

好きだとか大事だとか
可愛いとか
絶対言わないけど

わたしのこと
好きで大事で
可愛いと思ってること
わたしにはすごくよくわかる

わたしが同じに思ってるかなんて
叔父さんにはきっと
どうでもいいってことも









2018年5月30日

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