やさしい彼女

やさしい彼女
荒木田慧の詩集 ひとの詩より



猫がひかれて
死んでたんだけど

役所?保健所?
土曜日で休み

遺体をとってあげようかな


やさしい彼女から
送られてきたテキスト

受け取ったわたしは
あたらしく知り合った
男の子と会うために
電車に乗っていて

心細そうだったけど
手伝えなくて
やさしい彼女


ひとりでやってみたいけど
叔父さんに手伝ってもらおうかな

行ってくる

断られた

埋める場所は提供してくれるって

行ってくる

用意して
現場に行ったら
ごみ収集車がきてて
片付けたところだった

黒い猫

遺体を包むのに
ミニストップで
上毛新聞を買ったら
肌の黒い
どこかの国からきた
研修生がいたよ

新聞の売り方が
わからなかったみたいだったから
じょうもうしんぶんだよ、って
買えた


わたしはかんがえる

いつも金に困っている
まとまった活字なんか
ろくに読めない彼女を

バイトのひとが忙しそうで
見ていてつらくなるから
普段ミニストップには行かないという
やさしい彼女を

うすぐもりの底で
アスファルトの上で
途方にくれる
彼女と
彼女の手の中の
読まれることのない新聞を
(それらは雨の予感を含んでいて)

ごみ収集車のなかの黒猫と
それを見送る
彼女のまるい背中を

わたしは
どこかの
献身的な猫が
とことこと歩いてきて
ぎゃん!と
車に撥ねられてくれないかと
心のすみの方で
ちいさく願う

そうしたら
やさしい彼女と
彼女の新聞
そこにいたって
いいと思うから









2018年6月23日

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