Here Comes The Sun

Here Comes The Sun
荒木田慧の詩集 「エッセイ」より
20歳のころ
西のブンカに
死にそうになって
死ぬ前にと思い
東へ向かった

インド
1ヶ月いって
でっかい
ハテナマーク ❓
つけて
帰ってきて
だから
わたしはそれ
ビックリマーク ❗️
にしたくて
2年くらいあと
また行った
3ヶ月

カルカッタ
ここまできて
日本人のむれに
まざってたまるかと思い
声かけてきた
知らないインド男に
ついてっちゃって
名前もわかんない
田舎の村で
ムスリムの大家族と
3週間すごした
電気もガスも水道もなくて
なんにもなくて
でも
ぜんぶあった
牛も鶏もヤギも
同じ石の家に寝起き
お父さんは
村のシャーマンで
おもしろいおまじない
見せてもらった
でも飲んだくれで
お母さん泣いてた 笑

はなしがそれた
それはまた別のお話

わたしは北の
リシケシというまちへ行った
そこはガンジスの源流のちかく
まちには
ヨガのアシュラムがいくつも
みちには
オレンジのふくをきて
顔に おいのり をつけた
サドゥーとよばれるおじいさんが
いっぱい座ってる

わたしはまちの
はじのほうのアシュラムに泊まって
ちかくに
ビートルズが修行した
アシュラムがあると知った

わたしはそのころ
ビートルズの音楽
ほとんど知らず
なぜか
タータンチェックの古布の
ホコリくさい日なたを思うので
あまりよく
聴かなかった
でも
彼らが
世界中を
熱狂の渦につつんだという
そのことは知っていて
だから
世界をそんなにも惹きつけた
彼らが修行したという
そのアシュラムに
行ってみたくて

ガンジス河沿いを
ひとり
たしか歩いて
わたしは途中で
道がわからず
道端にたむろしていた
サドゥーのむれに
聞いた

「ビートルズが
修行したという
アシュラムへは
どうやったら
たどり着けますか」

サドゥーたちは
なにもいわず
腕をたかく掲げ
わたしのすすむべき道を
示した

ビートルズが修行した
そのアシュラムは
ずいぶん前に廃墟になっていて
とてもおもしろいデザインで
ほかのアシュラムとは
ぜんぜんちがった

たてものの前に
繭のような
白いブースが
いくつも
だんだんに置いてあって

わたしは
その場所に
わたし以外
誰もいなかったので
もしここで
わるい人やこわい人がきたら
わたしは殺されてしまうかもしれないと
そう思ったけど
好奇心をおさえきれず
ビートルズの
ジョン・レノンや
ポール・マッカートニーは
どの繭にはいって
瞑想をしたのだろうと
のぞいてまわった

考えてみれば
わたしは高校生のころ
ニューヨークに住む
日本人の先生と出会って
クイーンズの先生のアパートメントへ
あそびにこいと言われて
なんどもニューヨークへ行った
テロの前と
テロの後にも

テロの後
朝のダイナーで
先生が読む 新聞の 一面の写真
ワールドトレードセンター
フォーリング・フォーリング・マン
わたしはそれが 忘れられない

行方不明者のはり紙
まだベタベタ貼ってある
グラウンド・ゼロ
行ったけど
こころはなにも 感じなかった
感じることが できなかった

ある日
先生とわたしは
街をあるいていて
ジョン・レノンが殺された
その場所のちかくを
通った気がする
先生が
あそこでジョンは撃たれたと
そう言った気がする

大人になって
ビートルズの曲
いちばん好きなのは
ジョンがポールとふたりでつくった
「Across the Universe」
というやつで
でもジョンがうたったのじゃなくて
ジョンの息子のショーンが
Moby と Rufus Wainwright という
2人のともだちと
3人でうたった ライブ映像のやつ
YouTubeの
それじゃなきゃだめで
そのなかでも とくに
Rufus Wainwright という
はじめてしったひとの エネルギー
それに ショーンと Moby が重なって
それは
完全な調和 真円 真球だったので
わたしは苦しいとき
それを くりかえし くりかえし 聴いた

2016年11月
わたしは発狂して
でもこころは凪のよう
魂がいきいきして
みためは狂人でも
このままで生きたいと思った

少し落ち着いた年末
アメリカのセドナに
行きたくて
少ない貯金(夫の わたしのはない)
ぜんぶ叩いて
アメリカの
セドナに行った

2016年12月31日
ラスベガスにもどり
歓喜の前の抑圧と
マリファナの街をあるき
揉まれながらカウントダウン
HAPPY NEW YEAR!
ホテルなんかとってないから
ファッションショーというビルの
駐車場で車中泊

夜が明けて
2017年1月1日
ホテルミラージュの
シルクドゥソレイユの
「LOVE」というショー
それはビートルズをテーマにしたもので
夫がそれをみたいというので
みにいった

わたしはビートルズが
何人いるのかも知らなかったけど
4人の写真
柱に貼ってあって
ショーをみたあと
わたしは
やっと
やっと理解することができた
LOVE
という文字のひとつひとつが
この4人なんだと
だから世界はこんなにも
彼らをほしがるのだと

ショーのなか
「Here Comes The Sun」
という
はじめて聴く曲
そのとき
うえから
ミラーボールと
ターバンをかぶった
マハリシが おりてきたから
わたしは たのしくて わらった
ビートルズでいちばん
すきな曲
「Across the Universe」と
これになった
(でもこれはジョンじゃなく
ジョージ・ハリスンの曲らしい 笑)

インドへいってから
もう13年近くたつが
わたしはいまも
あの日 リシケシで
サドゥーが示してくれた
あの
指の先をみてる

わたしはそこにあるだろうひかりを
どうしても みてみたい

Here comes the sun
Here comes the sun, and I say
It's all right

Sun, sun, sun, here it comes
Sun, sun, sun, here it comes
Sun, sun, sun, here it comes
Sun, sun, sun, here it comes
Sun, sun,…
(from "Here Comes The Sun" The Beatles)









2018年5月21日

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