くに と せんそう

くに と せんそう
荒木田慧の詩集 社会の詩より
ちいさいころ
テレビの朝のニュース
「今日の全国のお天気」

私はそれを
この世界
全ての国の
天気だと思っていた

国 というものは
いま自分が住んでいる
この国 以外にもあると
教わっていたから
「全国」というのは
「全ての国」のことだと思った

後に
「全国」というのは
「この国の全て」という意味だと
理解した

小学2年生くらいのときだったか
集会で先生が
「今日から 湾岸戦争が始まります」
と言った
私のうちのトイレには
「はだしのゲン」があったし
お母さんは
戦争のこわさを
いつも教えてくれたので
私は また
こわいことがおこると
そう思った
でも 私の国には
なにもおこらなかった

小学6年生のころ
小学校の玄関に
「戦後50年」
と書かれたポスターが貼ってあった
他の国で 戦争があっても
自分の国で 戦争がなければ
それは戦後に なるのだろうか

中学生になって
日本史や世界史の授業が 大嫌いだった
教科書には
いつ どこで だれが なにをしたかは
書いてあったが
だれが なにを おもい それをして
そのとき ひとびとは どう 感じたのか
なにも 書いていなかったから
私は 歴史が 全然わからなかった

いつか
私が おおきくなって
たくさん 本を読んで
かしこくなったら
「心で読む世界史」
という本を書こうと
心の中で 思っていた

大人になって
日本の兵隊が
韓国の女の人に酷いことをして
つらく かなしいおもいを して
たくさん なみだをながしたひとが
いたと聞いた
私は ああ そうなのか と思った

そのあと
やっぱり それは 嘘で
つらく かなしいおもいを して
たくさん なみだをながしたひとなど
全然いなかったのだと 聞いた
私は ああ そうなのか と思った

でも ある日
テレビの 戦争のドラマで
樹木希林が 従軍慰安婦の役をしていて
戦地で つらく かなしいおもいをして
生理が ぴったり とまってしまって
でも ある日 ある日
すごく すごくすきな人が できたら
止まっていたきりだった 生理が
また はじまったのだと
そう 言っていた

私は それをみて
もし 戦争のあと
国の えらい人どうしが
えらい人だけで 話をして
戦争で ひどいことが たくさんあったけど
あれは 合意の上だったよねと
もし そう決まっても
それでも
あの日
つらく かなしいおもいをして
たくさん たくさん
なみだを ながしたひとが いた
そのことは けして
変わらないのではないかと
そう 思った

みんな あいする人がいて
しあわせに なりたくて
でも 方法が わからなくて
けんかを する

ぼくも 痛かったけど
きみも 痛かったね
でも
きみも 痛かったけど
ぼくも 痛かったよ
どうか どうか
それを きみに
ぼくは わかってほしい

ぼくは きみが だいすきなんだ
きみも ぼくを あいしてほしい

みんな 素直に そう いえば
戦争なんて おこらないのに

いつか
全ての国が けんかをやめて
世界が 平和になるときが くるとしたら
それはきっと
ほかの星から 宇宙人が攻めてきて
地球の国がみんな
協力して
たたかわなければ いけないときだと
ちいさな頭で ぼんやり おもった

でも 私は
宇宙人とも けんかをしたくありません









2018年5月20日

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