タダ飯2018夏

タダ飯2018夏
荒木田慧の詩集 生活の詩より



2ヶ月くらい前から
週に1〜2回
となりのうちの小母さんが
弁当をもってくる

前に住む無職こもりきりの父と
裏に住む無職ふらふらの叔父のため

ふたりぶん

さいきんはそこに
住所不定無職 自称詩人
叔父さんちに居候の
わたしが加わり

3にんぶん

主食といくつかの惣菜を
ビニールのパックにいれて
小さいカンの飲み物までつけて
白いビニールぶくろに
ひとりぶんずつ

となりのうちに
ひとりで暮らす
民生委員の
さみしい小母さん

親切でおせっかいで
小柄なかわいい小母さん

小母さんのやさしさを
叔父さんは嫌がり
父は断固拒絶し

仕方がないので
小母さんがくると
わたしが弁当を受け取り
礼を言う

小母さんは
わたしたち3にんを
男子高校生か何かだと
思っているのだろうか
小母さんのつくる弁当は
やたらと量が多く
父が食べないので
どうしたって余る

横に大きな
小母さんの家の
今はだれもいない家族を
食べさせたキッチンで
ひとり
わたしたち3にんのために
米を炊き
厚揚げを煮
キャベツを刻む

小母さんは
そのとき
なにを
思うのだろう

ふたりの甲斐性無しが
受け取りたがらない
彼女のやさしさを
わたしは女として
同じ女として
責任をもって
受け止めなくては

そんな気がして

いつもすみません
この前の美味しかったです
甘いものはお好きですか
こんどお礼になにか

近所のディスカウント酒屋で
外国のうまいチョコナッツクッキーと
希望の雫 とラベルのついた
びんのリンゴジュース
買って

わたしはそれを
小母さんに持って行きたかったが
わたしはそれを
食べて
飲んでしまった









2018年6月29日

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