The Great Escape (1)

The Great Escape (1)
荒木田慧の詩集 「エッセイ」より
朝5時20分ごろ
家を飛び出した

おっとに
他の男のペニス
咥えてるのがばれて
(!!100%メタファー!!
この淫乱女め!と思われた方
前にわたしが書いた
「煙草」という詩をご参照ください)

たまご色のおっとのロンT
穴の空いた紺色のスウェットパンツ
縞の靴下
イエローカーキのナイロンコート
おっとと揃いで買った
白のキャップ SHORELINE の文字 冠って
足元はなぜか
眩しいピンク
ナイキのランニングシューズ

ポケットにiPhoneとイヤホン
家のかぎ
(これにはNYのクイーンズにあるという設定の
架空のホテルのキーホルダーをつけてる
わたしは どこにも行けないけど
いつも どこかに 行きたかったから)

それだけ持って
家を飛び出した

公園
水飲みたくて
でも
チョロチョロしか
出なかった

おっとは私の詩を読まないし
私が歌うと怒る
私がかいた絵 写真で送ったら
めちゃくちゃに落書きして返して来た

最近のわたしは
気持ちが外に向いていて
自分のほうを全然向いてくれないと
かれは不満を言う
かれにはわたしの矢印が
わたしの大きな鋭い矢印が
外ではなく
わたしに向かって
深く深く突き刺さっているのが
どうしてもわからない
わたしはそれが もどかしくて

ああもう わたし
このひととは
むりかもしれない

ベンチで
まだ今日は始まったばかりで
金もない何もない
さあ どうしようね

5:24
群馬の叔父さんにメール
(ああ 私の 私の魂の理解者よ
ああ 私は あなたの あなたの魂がわかる
私たちは いつ どこにいても
いつも つねに つながっている)

即返信あり 3レス目
「◯◯駅で会いましょう 大荷物コンビニでおくりましょう」
(叔父さんはいつも 何も聞かない)

わたしに金がないから
群馬から埼玉まで
1時間45分かけて
迎えに来てくれることになった

「◯◯君が出勤したら荷造り開始」

かれは今日 休みを取っていて
わたしと東京をぶらつく予定だった

「荷物あきらめて」
「では◯◯駅で」

9:07
改札前
おちあう

叔父さん
叔父さんの青いチェックのシャツ
(それはあなたのものじゃなく
金持ちの伯父さんからのお下がりで)
くすんだベージュのチノパン
あなたの
自分を持て余したような
その比較的おおきな体躯
それをみたとき
わたしがどれほど安堵したか
わたしはこの邂逅を
生涯忘れることはないでしょう

わたしは空腹で喉も乾いていたので
腹一杯 丼 食べさせてもらい
コーヒーを飲ませてもらい

叔父さんが
上野の黒門がみたい
と言うので
上野へ向かうことにした

(なんと優雅な 大脱走)

「朝起きて仕事なんていやだね…
ゾッとするね…」

(電車に乗るとすぐ眠くなっちゃう)
「ずっと乗ってれば?…」
(東京にきて
新卒で入った恵比寿の会社
山手線降りられなくなって
ぐるぐる回って
4ヶ月で辞めたよ)
「仕事なんてやだね...」

上野公園
ロダン 地獄の門
まんなかに座る
ちいさな 考える人
その向かいに座る
おおきな 考える人

黒門 みて
「こんな門のあるうちに生まれたら
まわりの人間
みんなゴミに見えるだろうね…」
その家は偶然にも
わたしが置いてきた おっと と同じ名前で

何かのあつまりがあるのか
いろんな国旗のついた
黒塗りの車
道に停まっていて
赤と白 上下二色の旗
「ほら あれはインドネシアだ
逆さにすると ポーランド
シロ が上なのが ポーランド
白人が 上なのが ポーランド
覚えやすいだろ…」

駅のベンチで
叔父さんはつらつらと
ネアンデルタール人の話してて
ちょうど上野
人体展
やってたから入った

1600円!
「高っけぇ〜…」

ダヴィンチの手稿
心臓
(ダヴィンチの時代は
血液が循環するという概念はなかった
血液は心臓であたためられ
精気を復活させると信じられていた
わたしはそう信じている人たちの精気と
血液の循環を知っている人たちの精気が
まったく同じものだとは
どうしても思うことができない)
「ああ これが1300円ぶんくらいだ ほかのは見るイミないよ…」

アインシュタインの脳の切れ端
ペンフィールドのホムンクルス

「外のことでも精一杯なのに中のことまでみなきゃならないなんて 医者は大変だ…」
「1600円むだにして いいものみられてよかったね…」

レストランの案内表示
「"レストラン"だって…生々しいね…」

(2に続く)









2018年5月25日

他の「エッセイ
この詩を読んだ人におすすめの詩
+ コメントする
© 2021 Kei Arakida