さんすうドリル

さんすうドリル
荒木田慧の詩集 恋愛の詩より
不足していなけりゃならない



男は言った

おれは 不足していなけりゃならない と


私は

足してやりたい



そう 思ってしまったから

その男を

その男たらしめていた

そのものを

だいなしにしてしまって

(それはもう

取り返しがつかないほどで)

赤いペンで

大きなばつをもらった

かえりみち

つぎの男には
ぜったいに
足してやるまい



そういつも思うのだが

結局
また

足して

溢れさせ

また
だめにしてしまい

男はもうだれもいないのに
赤い大きなばつだけが
私に
増えて

やはりかえりみち

私はそれをかばんごと
脇の用水路に
捨てたくて棄てたくて
なんどもなんども
足をとめた









2018年5月6日

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