ふたりのり




姉の自転車のうしろ
初めてだったかもしれない

じめじめした公園に行きたくて
姉も公園もそんなに好きじゃなかったけど
シーソーがあって
ふたりじゃないと乗れないでしょう

ぜったいにしゃりんにあしをいれてはいけないよ
と姉が言った

絶対に車輪に足を入れない
と私は誓った

でも
やはりというか
何というか

私は走り出してすぐ
後輪に足を入れた

やはりというか
何というか

私のかかとは
血まみれになった

姉は慌ててハンドルを切り返し
来た道をもどりながら
おかあさん
と叫んだ

驚いた母が遠くから駆け寄り
魚眼のようにゆがんで
たしか白い服を着ていた

あのとき
私はどうしていたのか

(きっといつものにやにや顔で
へらへらしていたろ)

私はふたりのりが怖い
ひとのうしろがこわい

おい気をつけろと言われ
うん気をつけると応え
応えながら
ぐるぐる回るくるまに
へいきで片足を入れてしまう

鉄のピーラーは
未発達のかかとを剥き
果汁は噴き
止まらない回転が
それを半径1メートルに散布し

いま
大人のかかと
ずいぶん硬くなったが
ひとのうしろに乗ればまたすぐにでも
血まみれになるでしょう
そして
その血はもう
果汁のようではないでしょう

だからふたりのりはしない









2018年4月25日
生活の詩より