ラブホテルのフロントでアルバイトしたかった

ラブホテルのフロントでアルバイトしたかった
荒木田慧の詩集 心の詩より
夫と暮らしたアパートは
寂れた町の高速沿いで
ちょっと歩いたらラブホテル街でした

この町で
私みたいな女が働こうと思ったら
選択肢は3つです

コンビニか整骨院の受付か
ラブホテルのフロント

断然、ラブホテルのフロント

ラブホテルのフロントでアルバイトしたかった


ラブホテルのフロントでアルバイトしたかった私を
止めたのは夫でした

職場の男にそそのかされて
寝そうだからって
ラブホテルのベッドで

そんなことしたこと
なかったのに、です

ラブホテルのフロントでアルバイトできなかった私が
辞めたのは妻でした

夫のところを飛び出して
いろんな男をそそのかして寝ました
いろんな街のいろんなベッドで

ラブホテルのフロントでアルバイトしていたら
そんなこと
ならなかったのに、です


深夜に泣き始める私を
なぐさめる夫の優しさを

ベッドから動けない私を
責めない夫の寛容を

捨ててまで求めていたのです私は

夜寝て朝起きて
ラブホテルのフロントでアルバイトする権利を!

ベッドから這い出て
ラブホテルのフロントでアルバイトする自由を!


ラブホテルのフロントでアルバイトしたかった私は
右腕に権利を
左腕に自由を
それぞれはべらせて
一人きりのベッドで深夜
ラブホテルのフロントでアルバイトできないなら
もう二度と結婚なんかするまいと笑いました









2019年2月27日

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