甘いコーヒーは飲めない

甘いコーヒーは飲めない
荒木田慧の詩集 生活の詩より
手に取るとどれも
少なすぎたり多すぎたりしていて

それは捨て魔の叔父の家と
捨てられない母のアパートに似ている


「お前は自分が特別だとでも思っているのか」と
次、問われたら
「あなたは自分が特別でないとでも思っているのか」と
問い返そうと

コンビニの駐車場で早朝
シャドウボクシングを続けているが

素人相手に戦ってはいけないと
新聞配達の元ボクサーから忠告

むきになった私の負け


どちらを選んでも間違っているので
余計に間違っているほうを選んだ


きのう外でたばこを吸って
スーパーのいりぐちのゴミ箱に捨てたが
火はちゃんと消えていたかどうか

たしかめに行きたい気もするが
「店が燃えた」という情報は無いので
たぶん大丈夫だったのだろう


罰みたいに苦い
インスタントコーヒーが好きで

口唇みたいにふちの厚い
マグカップに入れて飲むのが好きで

秋にこれを買ってくれた男には
やっと愛想を尽かされたみたいだ

たいして好きでもないのに
搾取しようとしたのが
ばれたんだと思う


咎めることのできる私ではないから
咎めずにいるのだが
それは優しさに間違えられやすいようで

気持ち悪くなるから
甘いコーヒーは飲めない









2018年12月2日

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