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荒木田慧の詩集 生活の詩より
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7月のさいごの午後
はんぶん閉じたふすまの
こちらには女が
向こうには男がいる

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女は裸で布団に身を投げている
旧型の扇風機が首を振りながら
その肌に熱風を吹き付けてゆく

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女ははんぶん目が覚めているのだが
瞼がまだ閉じたいというので
抵抗せずそのままにしている

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布団から姿は見えなくとも
女には男の苛立ちがわかる
ぬるま湯のような汗がふた筋、腿を伝う

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べつのあたらしいライターが
仏壇のひきだしにあったかもしれない、と
眉間の上の方で女は考える

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「ね」のかたちに
唇をひらきかけたところで

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男が深い息を吐くところまで
きちんと聞き届けてから
女はまた浅い眠りに入る

嗅ぎなれた薄いけむりが
その鼻先をかすめてゆく









2018年8月1日

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